成層圏30kmでシャボン玉の生成に成功|宇宙の入り口で挑んだ、徳島大学との実験の記録

青空と海。成層圏30kmでのシャボン玉生成実験
シャボン玉おじさん

シャボン玉おじさんの野村佳史です。宇宙でシャボン玉をとばしたら、どうなるのか。2024年、TBSの番組『どうなるでSHOW』の企画で、徳島大学のスペースバルーンチームと一緒に、高度およそ30km──宇宙の入り口ともいわれる成層圏で、シャボン玉をつくる実験に成功しました。番組では「世界で初めて」の成功として紹介されています。この記事では、-70℃にもなる世界で膜をつくるためのシャボン液づくりから、映像にシャボン玉が映っていた瞬間までを、僕の目線で記録しておきます。

成層圏シャボン玉実験の概要

放送
2024年6月10日 TBSテレビ『どうなるでSHOW』
高度
約30km(成層圏)
環境
気圧は地上の約1/100、気温は-50〜-70℃
協力
徳島大学・佐原理教授のスペースバルーンチーム
しくみ
大きな気球で装置を打ち上げ、成層圏で二酸化炭素(CO₂)を送ってシャボン玉をつくる
結果
回収した映像で、豆粒ほどのシャボン玉ができていることを確認
担当
シャボン玉おじさん:低温でも膜をつくれるシャボン液の開発
TBS公式YouTubeの番組予告『どうなるでSHOW』6月10日(月)放送回

数字で見る 成層圏シャボン玉実験

約30km実験した高度(成層圏)
約1/100地上とくらべた気圧
−50〜−70℃成層圏の気温
2024年6月10日TBS『どうなるでSHOW』放送

宇宙でシャボン玉はどうなる?番組からの1本の電話

「成層圏でシャボン玉をつくれますか?」

最初に連絡をいただいたとき、正直、耳を疑いました。

「成層圏、つまり高度30kmの宇宙に近い場所で、シャボン玉ってつくれると思いますか?」TBS『どうなるでSHOW』番組スタッフからの相談

『どうなるでSHOW』は、専門家の意見が分かれるような疑問に、実際の実験で答えを出していく科学バラエティ番組です。このときのテーマが「宇宙でシャボン玉をとばしたらどうなる?」でした。

声をかけていただいた理由

シャボン玉のパフォーマーは、全国にたくさんいます。そのなかで僕に声がかかった背景には、こんなことがあったと聞いています。

  • 2022年11月26日に、シャボン玉のギネス世界記録(Longest garland wand/14.317m)に認定されていたこと
  • 学研『学研の科学 アウトドア 大シャボン玉チャレンジ』の公式監修者を務めていたこと
  • ショーだけでなく、シャボン液の配合や膜のしくみについても発信してきたこと

「NASAにも成功した記録がない」と聞いて

打ち合わせの中で、番組スタッフからこう聞かされました。「この実験、NASAにも成功した記録がないそうなんです」。一瞬、言葉が出ませんでした。怖くなかったと言えば、うそになります。それでも、むずかしいことほど挑んでみたい気持ちが、静かに動き出していました。気がつくと「やらせてください」と答えていました。

一緒に挑んだ、徳島大学・佐原理教授のスペースバルーンチーム

成層圏での撮影と実験を手がけてきた佐原先生

この実験を科学として成り立たせてくれたのが、徳島大学大学院社会産業理工学研究部の佐原理(さはら おさむ)教授と、スペースバルーンプロジェクトのチームです。佐原先生は、成層圏での映像撮影や、実験サンプルの回収に取り組んできた方。実験の様子は、徳島大学総合科学部の「どうなるでSHOW宇宙実験」でも紹介されています。

番組スタッフには、こうお伝えしました。「シャボン玉をつくる側の知恵がなければ、この実験はきっと成功しない。科学の側からは見えない景色があるはずです」。喜んで協力させていただくことになりました。

スペースバルーンで「宇宙の入り口」へ装置を届けるしくみ

大きなゴム風船(スペースバルーン)に実験装置をつるし、高度30kmの成層圏まで上げて、その場でシャボン玉をつくる。ミッションを一言でいえば、こういうことです。装置には、次の4つを一体にして積みました。

  • 🫧シャボン玉をつくる特製の装置
  • 🧪二酸化炭素(CO₂)のガスボンベ
  • 🎥低温・低い気圧に耐えるカメラ
  • 📡制御と回収のしくみ

気球を上げ、海に落ちた装置を回収するまでは、佐原先生のチームが長年積み重ねてきた領域です。僕たちの装置を宇宙の入り口まで届けてくれる、心強いチームでした。

成層圏はどんな場所?地上とのちがい

打ち合わせを重ねるほど、むずかしさが見えてきました。ふだん保育園や商業施設でとばしているシャボン玉とは、まったく別のルールで動く世界です。

地上

気圧
約1,013hPa
気温
約15℃
紫外線
弱い
水蒸気
多い

成層圏(高度約30km)

気圧
約10hPa(地上の約1/100)
気温
-50〜-70℃
紫外線
とても強い
水蒸気
ほとんどない

「液は凍る」「ガスを入れれば割れる」2つの壁

壁1 シャボン液が凍る

-70℃では、ふつうのシャボン液はすぐに凍ってしまいます。膜としてふくらむ前に、かたい薄い膜になって砕けてしまうのです。

壁2 ふくらむ前に割れる

気圧が地上の約1/100しかないため、ガスを勢いよく送ると中と外の気圧のバランスが一気に崩れ、膜ができる前に割れてしまいます。

「液を凍らせず、割らずに膜をつくる」。この2つを両立させることが、実験全体の鍵でした。

壁1 凍る−70℃でシャボン液が凍る
+
壁2 割れる気圧が低く、ふくらむ前に割れる
▶
答え凍らせず、割らずに膜をつくる液

図:成層圏でシャボン玉をつくる2つの壁

-70℃でも膜をつくる、シャボン液づくり

プロピレングリコールと、低温に強い界面活性剤

液の土台には、凍りにくくする働きのあるプロピレングリコールを使いました。食品や化粧品にも使われている成分で、水が凍る温度を大きく下げる性質があります。これに、低温でもやわらかさを失いにくい界面活性剤(膜をつくる成分)を組み合わせることで、「氷点下でも膜を保てるシャボン液」の形が少しずつ見えてきました。

冷凍庫で、何度もくり返したテスト

自宅の冷凍庫で、何度もテストを重ねました。試作した液で膜を張り、どの温度で凍るか、どの濃さでやわらかさを失うかを記録していく。試作の1本ごとにラベルを貼って並べ、十本、二十本と増えていきました。

「割れない」と「ふくらむ」のあいだで見つけた答え

失敗は何度もしました。割れない液はふくらまない。ふくらむ液は凍ってしまう。進んでは戻り、戻っては別の道を探す日々でした。正直しんどかったですが、僕のシャボン玉人生でいちばん濃い時間だったと思います。

実験の流れ

相談
番組から「成層圏でシャボン玉をつくれますか?」
液づくり
プロピレングリコールと低温に強い界面活性剤自宅の冷凍庫で何十本も試作
装置
シャボン玉装置・CO₂ボンベ・カメラ・制御と回収のしくみを一体に
打ち上げ
徳島大学のチームがスペースバルーンで高度約30kmへ
回収
海に落ちた装置を回収
確認
映像に豆粒ほどのシャボン玉。世界初の成功として放送

図:相談から成功の確認まで

回収された映像に映っていた、豆粒ほどのシャボン玉

手を離れた装置と、待つだけの時間

大きなゴム風船が装置をつり下げて、ゆっくりと空へ上がっていく。そこからは、ただ待つ時間です。地上からは、シャボン玉が本当にできているかどうかは見えません。成層圏に着き、CO₂を送り、カメラが記録し、やがて海に落ちて回収される。そのすべてが終わるまで、祈るような気持ちでした。舞台袖で出番を待つ気持ちと、子どもを送り出す親の気持ちが、同時にやってきたような時間でした。

地上では見られない、ふくらみ方

気圧が地上の約1/100ということは、中の気体が地上よりはるかに大きくふくらもうとするということです。回収された映像を確認すると、CO₂を送った後半に、豆粒ほどの大きさのシャボン玉ができていました。

誰も大きな声を出さなかった

モニターの前で、誰も大きな声は上げませんでした。僕もスタッフの皆さんも、ただ静かに映像を見ていました。うれしさより先にあったのは、「いま、まだ誰も見たことのない景色を見ているのかもしれない」という、少し不思議な気持ちでした。

放送日には、宇宙飛行士の山崎直子さんも実験の映像について投稿してくださいました。

放送のあとに届いた声

2024年6月10日の放送後、番組はTVerで見逃し配信され、TBS公式YouTubeでも一部が公開されました。徳島大学総合科学部からも、実験についての発表がありました。

なかでもいちばんうれしかったのは、ふだんショーを見てくれている保育園の子どもたちからの声です。

「シャボン玉おじさんのシャボン玉、うちゅうまでいったの?」保育園の子どもたちから届いた声

この一言に、全部が詰まっていたように思います。僕の仕事は、イベント会場や園で子どもたちに笑顔を届けること。それでも成層圏のシャボン玉を通して、「遊び」と「学び」は本当はひとつなんだと気づかされました。子どもが「なんで?」と首をかしげる瞬間に、科学は生まれています。

宇宙の入り口で確かめたことを、園やイベント会場へ

シャボン玉は子どもの遊び道具であり、表面張力や膜のしくみ、光の色の見え方まで学べる、身近な科学の入り口でもあります。成層圏の実験で確かめたことを、ショーの中でもお話ししています。

ショーでは、たとえばこんなお話を

「宇宙の入り口でシャボン玉をつくったら、どうなったと思う?」。子どもたちに問いかけながら、気温や気圧でシャボン玉の様子が変わることを、実際のシャボン玉と一緒に伝えています。園の行事や商業施設のイベントで、対象の年齢にあわせて内容を組み立てます。

無料で相談・見積もり

開催日と会場が決まっていれば、内容やご予算が未定でもご相談いただけます。

宇宙・成層圏のシャボン玉についてよくある質問

宇宙でシャボン玉をつくると、どうなりますか?
場所によって変わります。国際宇宙ステーションの船内のような無重力の場所では、シャボン玉は落ちずにその場に浮かびます。今回の成層圏のように気圧がとても低い屋外では、中の気体が大きくふくらもうとするため割れやすく、液も凍りやすくなります。この実験では、低温用に配合したシャボン液とCO₂を使い、豆粒ほどのシャボン玉ができることを映像で確認しました。
成層圏でシャボン玉をつくったのは、本当に世界初ですか?
宇宙飛行士が国際宇宙ステーションの船内でシャボン玉をつくった例はありますが、成層圏の外の空気の中でシャボン玉をつくった例は、番組の調べでは見つかっていません。そのため、TBS『どうなるでSHOW』では世界で初めての成功として紹介されました。
シャボン玉は何度で凍りますか?
気温や湿度、風、シャボン液の配合によって変わります。一般には氷点下10℃前後より寒く、風の弱い日には、シャボン玉の膜が凍っていく様子が見られることがあります。成層圏の実験では-70℃でも膜をつくれるよう、凍りにくい成分を使って液を配合しました。
実験で使ったシャボン液は、市販されていますか?
成層圏の環境にあわせた特別な配合のため、市販はしていません。家族でシャボン玉づくりを楽しみたい方には、シャボン玉おじさんが監修した学研のキットがあります。くわしくは学研公式監修者としての活動をご覧ください。
ショーやイベントで、成層圏の実験のお話はしてもらえますか?
はい。園の行事、小学校、商業施設や企業のイベントなど、対象にあわせた内容でご提案します。お気軽にご相談ください。
放送回は今も見られますか?
TBS公式YouTubeで一部が公開されています。TVerでの見逃し配信は期間限定でした。今の配信状況は、各公式ページでご確認ください。

まとめ|成層圏30kmでつくった、豆粒ほどのシャボン玉

-70℃、地上の約1/100の気圧。シャボン玉にとってきびしい成層圏で、徳島大学のチームと一緒に、豆粒ほどのシャボン玉をつくることができました。くり返した失敗の中で見つけたシャボン液と、「なんで?」を大切にする気持ち。これからも、園やイベント会場で、子どもから大人までのみなさんに届けていきます。

この記事を書いた人:野村佳史(シャボン玉おじさん/バブルワークス代表) 2009年からシャボン玉パフォーマーとして活動。2022年11月26日にシャボン玉のギネス世界記録に認定(シャボン玉のギネス世界記録(14.317m))。学研公式監修者。全国600施設以上で公演しています。

最終更新日:2026年10月2日

シャボン玉ショーのご相談・お見積りは無料です

日にちと会場だけで大丈夫です。いちばん話しやすい方法でどうぞ。

ABOUT ME
シャボン玉おじさん
シャボン玉おじさん
プロバブルアーティスト
元海上自衛官。 2022年にシャボンのギネス世界記録「Longest garland wand部門」世界記録を達成。 学研『学研の科学 アウトドア 大シャボン玉チャレンジ』公式監修者。 令和6年に徳島大学総合科学部・佐原教授の協力のもとスペースバルーンを使用して、世界で初めて宇宙空間(成層圏)でのシャボン玉の生成に成功。その様子は令和6年6月にTBSテレビ「どうなるでSHOW」という番組にて放映されました。 多くのテレビ番組や、メディアにも出演している日本屈指のシャボン玉パフォーマーです。
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