シャボン玉の雑学①

成層圏30kmで世界初のシャボン玉生成に成功|TBS×徳島大学×シャボン玉おじさん共同実験

シャボン玉おじさん

シャボン玉おじさんの野村佳史です。

2024年6月10日、TBSの特別番組『どうなるでSHOW』で、僕たちは高度およそ30,000m──つまり成層圏で、世界で初めてシャボン玉を生成することに成功しました。NASAも成し遂げていなかった「宇宙の入り口でのシャボン玉」。

放送から時間が経った今でも、回収された映像を初めて見た瞬間の、手のひらに汗が滲む感覚を覚えています。この記事では、徳島大学のチームと共に挑んだあの数ヶ月を、僕の視点から記録として残しておこうと思います。

TBSから一本の電話──「成層圏でシャボン玉を飛ばせますか?」

番組『どうなるでSHOW』からの相談内容

最初のご連絡をいただいたときは、正直、耳を疑いました。

「成層圏、つまり高度30kmの宇宙に近い場所で、シャボン玉って作れると思いますか?」

TBSの番組スタッフから、こんな相談が舞い込んだのです。『どうなるでSHOW』は、”専門家の意見が真っ二つに割れる”ような難問に、実際の実験で答えを出していくという科学バラエティ。今回のテーマは「宇宙でシャボン玉を飛ばしたらどうなる?」でした。

なぜ”シャボン玉おじさん”に白羽の矢が立ったのか

正直に言えば、シャボン玉のパフォーマーは全国に何人もいます。それでも声をかけていただいた背景には、いくつかの理由があったと聞いています。

  • 2022年にギネス世界記録(Longest garland wand部門/14.317m) を達成していたこと
  • 株式会社学研のシャボン玉製品の監修者・アドバイザーを務めていたこと
  • パフォーマンスだけでなく、シャボン玉の化学的・物理的な知見にも踏み込んで発信してきたこと

「エンターテイナーであると同時に、シャボン液の配合や物性を語れる人」──そのポジションが、今回の実験監修に必要だったのだと思います。

「NASAも成功していない」と聞いた瞬間に感じたこと

打ち合わせの中で、番組スタッフから一言、こう聞かされました。

「この実験、NASAも成功した記録がないそうなんです」

一瞬、言葉を失いました。怖かったかと聞かれれば、怖かったです。でも同時に、元海上自衛官として組織で培った「無理なことほどやりがいがある」という思いが静かに動き出していました。

「やらせてください」。気がつくと、私はスタッフさんにそう答えていました。

共に挑んだのは、徳島大学・佐原理教授率いるスペースバルーンチーム

成層圏研究の第一人者、佐原理教授との出会い

今回の実験を科学的に成立させてくれたのが、徳島大学大学院社会産業理工学研究部の佐原 理(さはら おさむ)教授と、そのスペースバルーンプロジェクトチームです。

出典:「どうなるでSHOW宇宙実験」徳島大学総合科学部

佐原先生は、日本国内における成層圏での映像撮影と科学実験サンプル回収を可能にした、この分野の第一人者。様々な実験を手掛けてきた方でした。

僕はご依頼してくれた番組スタッフにこうお伝えしました。

「シャボン玉の”職人”の知見がなければ、この実験は絶対に成功しない。科学の側から見えない景色があるはずです」喜んでご協力させていただきます。

スペースバルーンで「宇宙の入り口」へ装置を届ける仕組み

今回のミッションは、シンプルに言えば、

「巨大なゴム風船(スペースバルーン)に実験装置を吊るし、高度30kmの成層圏まで打ち上げ、その場でシャボン玉を生成する」

というものでした。装置には、

  • シャボン玉生成用の特製マシーン
  • 二酸化炭素(CO₂)のガスボンベ
  • 超低温・低圧下に耐える撮影カメラ
  • 制御系と回収用の仕組み

これらを一体化して搭載します。佐原先生のチームは、この高高度気球の運用と海洋回収のプロダクト開発を長年手掛けており、まさに”僕らの装置を宇宙の入り口まで届けるプロ集団”でした。

気圧1/100、-70℃の世界で”シャボン玉”は成立するのか

成層圏の物理条件──地上との圧倒的なギャップ

打ち合わせを重ねるほど、難しさが見えてきました。高度30kmの成層圏とは、こういう世界です。

環境条件地上高度30km(成層圏)
気圧約1,013 hPa約10 hPa(地上の約1/100
気温約15℃-50〜-70℃
紫外線非常に強い
雲・水蒸気多いほぼ無い

普段僕が保育園や商業施設で飛ばしているシャボン玉とは、まったく別のルールで動く世界です。

「液は凍る、ガスを入れれば爆発する」二重の壁

最大の難題は二つありました。

① 液が凍る -70℃という超低温では、通常のシャボン液は一瞬で凍結してしまいます。膜として機能する前に、硬い薄膜になって砕けてしまうのです。

② ガスを入れれば瞬時に破裂する 気圧が地上の1/100しかない環境では、中にガスを勢いよく吹き込むと、内部気圧と外気圧のバランスが一気に崩れ、膜ができる前に膨張破裂します。

「液を凍らせず、かつ破裂させずに膜を成形する」──この両立が、実験全体の肝でした。

界面活性剤とプロピレングリコール──膜を生かし続ける配合

液の配合では、凍結防止効果を持つプロピレングリコールを基剤に据え、極低温下でも安定して膜を作れる特殊な界面活性剤を選定しました。

プロピレングリコールは食品や化粧品にも使われる安全性の高い有機溶媒で、水の凝固点を大きく下げられる性質があります。これに、低温でも柔軟性を失わないタイプの界面活性剤を組み合わせることで、「氷点下でも膜を保てるシャボン液」のレシピが少しずつ見えてきました。

試作、失敗、また試作。地上での再現実験を繰り返した日々

低温チャンバーでの液テスト──凍った膜を何度も見た

自宅の冷凍庫で、何度も何度もテストを重ねました。低温槽に試作液を入れ、実際に膜を張り、どの温度で凍るか、どの濃度で弾性を失うかを記録していく。

試作一本ごとに、ラベルを貼って並べていきます。十本、二十本と並んでいく試験管を見ながら、「自衛隊時代に寒冷地訓練の感覚に似ているな」と、ふと思い出したりもしました。

「割れない」と「膨らむ」の狭間で見つけた最適解

試作は何度も失敗しました。割れない液は膨らまない。膨らむ配合は凍る。進んでは戻り、戻っては別の道を探す。

調合の試行錯誤をしていた時間は、正直しんどかったですが、僕のシャボン玉人生で一番濃密な時間だったと思います。

後日に映像確認──成層圏へ飛ばした、夢の装置

巨大ゴム風船に託した、一度きりのチャンス

実験の後日に映像を確認しました。目の前に立ち上がっていく巨大なゴム風船は、想像していた何倍も大きく、そして、静かでした。

装置を吊り下げ、最終チェックを終え、カウントダウン。僕たち人間の手を離れた装置が、ゆっくりと空へ上がっていく。あの瞬間、自分の中の”舞台袖でスタンバイする感覚”と、”子どもを送り出す親の感覚”が同時にやってきたことをはっきり覚えています。

高度30,000mへ──データが届くまでの長い沈黙

ここからは、ただ待つ時間でした。地上からはシャボン玉が本当に膨らんでいるかどうかは見えません。装置が成層圏に到達し、CO₂を噴射し、カメラが記録し、やがて海上に落下して回収される──そのすべてが終わるまで、祈るような時間が流れました。

そこに映っていた、豆粒サイズ”世界初のシャボン玉”

地上では決して見られない膨張の瞬間

気圧が1/100ということは、中の気体が地上よりはるかに大きく膨張しようとするということ。結果としては二酸化炭素射出の後半に豆粒サイズのシャボン玉が出来ていることが映像で確認できました。

「NASAも成し遂げていない」と言われた意味を噛みしめて

モニターの前で、誰も大きな声を上げませんでした。僕も、スタッフの皆さんも、ただ静かに映像を見ていました。

喜びよりも先に、**「自分たちがいま、人類がまだ見たことのない景色を見ている」**という、少し不思議な感覚だけがありました。

放送後に起きたこと──全国からの反響と、届いた声

TVer見逃し配信・公式YouTubeでの拡散

2024年6月10日の放送後、番組はTVerで1週間以上見逃し配信され、TBS公式YouTubeでも切り抜きが公開されました。徳島大学総合科学部の公式サイトでもプレスリリースが出されました。

園児・先生・研究者から届いた声

一番うれしかったのは、普段僕のシャボン玉ショーを見てくれている保育園の子どもたちから届いた声でした。

「シャボン玉おじさんのシャボン玉、うちゅうまでいったの?」

この一言に、全部詰まっていたように思います。

「自分の仕事が、教育になる」と気づいた日

僕の本業は、イベント会場や保育園で子どもたちに笑顔を届けること。派手な学会発表もなければ、研究論文を書くわけでもありません。

でも、あの成層圏のシャボン玉を通じて、“遊び”と”学び”は、本当はひとつなんだと気づかされました。子どもが「なんで?」と首をかしげる瞬間にこそ、科学は生まれている。この実験は、僕自身の仕事観そのものを変えた出来事でした。

なぜ、一人のパフォーマーが”宇宙実験”に呼ばれたのか

2009年から現場で磨き続けたシャボン玉の基礎知識

2009年、シャボン玉パフォーマーとして活動を始めてから、これまで全国300以上の会場でショーをしてきました。その一回ごとに、その日の気温・湿度・風向きで液を微調整し、最適な膜を作り続けてきました。

この”現場で鍛えられた感覚”が、極限環境での実験に役立ったのは間違いありません。

ギネス世界記録保持者・学研監修者というポジションの意味

記録や肩書きは、それ自体が目的ではありません。でも、「この人に任せて大丈夫だ」と判断してもらうための共通言語として機能します。

  • ギネス世界記録保持者:技術の証明
  • 学研シャボン玉製品 監修者:知見の証明
  • 徳島大学との共同実験監修:科学との接続点の証明

この三つが揃ったからこそ、TBSの大型企画に声をかけていただけたのだと、僕は思っています。

“遊び”と”学び”の境界を越えていく仕事

シャボン玉は、子どもの遊び道具です。同時に、表面張力・界面化学・薄膜干渉を学べる立派な科学教材でもあります。

この境界を越えて、**”楽しいから、知りたくなる”**という循環を作ること。それが、僕がこれからも続けていきたい仕事です。

シャボン玉おじさんが、次に届けたい景色

サイエンスショーとして全国の園・学校へ届けたい

今回の実験で得た知見を、**”学べるシャボン玉ショー”**として、保育園・幼稚園・小学校へ届けていきたいと考えています。「成層圏までシャボン玉を飛ばしたおじさんが来る」──それだけで、子どもたちの目は輝きます。

夜空を100万個のシャボン玉で彩る「ナイトバブル」へ

もうひとつ、ぜひ体験していただきたいのが、**夜空に100万個のシャボン玉を舞わせる「ナイトバブルショー」**です。宇宙の入り口で膜を成立させた技術は、夜の屋外で照明と音響に照らされるシャボン玉にも、確かに生きています。

宇宙で証明した技術を、あなたのイベント会場へ

商業施設・自治体・企業イベントのご担当者様。「他と違う夜間コンテンツを」「話題性のあるサイエンスショーを」とお考えでしたら、お気軽にご相談ください。

バブルワークス(Bubble Works) お問い合わせ:shabondama@bubble-works.net/TEL 090-8996-3186

よくあるご質問(FAQ)

Q. 成層圏のシャボン玉は本当に”世界初”ですか?

はい。無重力のISS船内で宇宙飛行士がシャボン玉を作った例はありますが、成層圏という外気環境でシャボン玉を生成した前例は、NASAを含めて確認されていません。今回のTBS『どうなるでSHOW』での実験が、現時点で公表されている世界初の事例です。

Q. 放送回は今も見られますか?

番組はTBS公式YouTubeで一部が公開されているほか、TVerでも期間限定で見逃し配信されていました。現在の配信状況は各公式ページをご確認ください。

Q. 実験で使われたシャボン液は市販されていますか?

今回の実験液は**-70℃の成層圏環境に特化した特別配合**のため、市販品ではありません。ただし、家庭や保育園で楽しめる安全なシャボン液の作り方は、株式会社学研から監修書籍『学研アウトドア大シャボン玉チャレンジ』で紹介しています。

Q. イベントで成層圏実験のお話はしてもらえますか?

はい。サイエンスショーの演目の一部として、保育園・小学校・商業施設・企業イベントなど、対象に合わせた構成でご提案いたします。


執筆者:野村 佳史(シャボン玉おじさん/バブルワークス代表) 元海上自衛官。2009年よりシャボン玉パフォーマーとして活動。2022年ギネス世界記録達成、株式会社学研シャボン玉製品監修者。2024年TBS『どうなるでSHOW』にて徳島大学と共同で世界初の成層圏シャボン玉実験を監修。全国300会場以上での公演実績。

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元国家公務員。 2022年にシャボンのギネス世界記録「Longest garland wand部門」のギネス世界記録を達成。 株式会社「学研」のシャボン玉製品の監修者&アドバイザー。書籍「学研アウトドア大シャボン玉チャレンジ」 令和6年に徳島大学工学研究部の協力のもとスペースバルーンを使用して、世界で初めて宇宙空間(成層圏)でのシャボン玉の生成に成功。その様子は令和6年6月にTBSテレビ「どうなるでSHOW」という番組にて放映されました。 多くのテレビ番組や、メディアにも出演している日本屈指のシャボン玉パフォーマーです。
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