シャボン玉チーム「AWABITO」…夢を運ぶパフォーマンス集団

シャボン玉おじさん

シャボン玉で人々を笑顔に——新潟発、夢を運ぶパフォーマンス集団「AWABITO」

子どもの頃、誰もが夢中になったシャボン玉。 あの虹色に輝く儚い泡が、大人になった今でも私たちの心を揺さぶるのはなぜだろう。

風に乗ってふわりと舞い上がり、光を受けて七色に輝く瞬間。そして次の瞬間には、儚く弾けて消えてしまう。その一瞬の美しさこそが、シャボン玉が持つ不思議な魅力なのかもしれない。

新潟を拠点に活動するシャボン玉パフォーマンス集団「AWABITO(泡人/あわびと)」は、そんなシャボン玉の魔法を全国に届けている。代表のsouさんと15名のメンバーが織りなすパフォーマンスは、子どもから大人まで、あらゆる世代の心を掴んで離さない。彼らの物語は、一人の会社員がキャンプ場で出会った偶然から始まった。

シャボン玉ショー

小針浜での運命の出会い

AWABITOの代表、souさん(1985年新潟県生まれ)は、20年間会社員として働いていた。週末になるとキャンプ好きの彼は、息子を連れて自然の中へ出かけていった。

「でも最近って、キャンプ場でも子どもたちはゲームをしていたりするんですよね」

子どもと一緒に本当に楽しめるものは何か——そんなことを考えていたある日、小針浜で人生を変える出会いが訪れる。

そこにいたのは、シャボン玉アーティストのカズさん。彼が作り出す無数のシャボン玉に、子どもたちは大喜びではしゃぎ回っていた。キラキラと輝く泡に包まれた空間は、そこにいる全ての人をワクワクさせる魔法のような場所だった。

「すっかり魅せられて、そのままカズさんに声をかけたんです」

親切に教えを受けたsouさんは、その週末から近所の公園で練習を始める。毎週、毎週。シャボン玉液の配合を試行錯誤し、風向きを読み、道具の使い方を研究した。最初は上手くいかないこともあったが、試行錯誤を重ねるうちに、次第に大きなシャボン玉や、無数の小さなシャボン玉を作れるようになっていった。

やがて自然と子どもたちが集まってきて、最後には「ありがとう」と感謝されるようになった。知らない人に感謝される——そんな経験がsouさんの背中を押した。

シャボン玉

「お前はプロなんだから」——友人の一言が変えた人生

趣味として始まったシャボン玉パフォーマンス。次第にイベントからの依頼が舞い込むようになり、仲間を集めて「泡人」として活動するようになった。

転機が訪れたのは、あるイベントでのこと。友人からかけられた一言が、souさんの心に深く刺さった。

「お金をもらっている以上、お前はプロなんだから、ちゃんと責任持ってやれ」

適当にやっていたわけではない。でも、その言葉はやけに心にすんなりと入ってきた。

実はsouさん、本業の傍らで常に副業にチャレンジしてきた人だった。カメラマン、飲食店スタッフ、運送業——時には3つの仕事を掛け持ちしながら、「面白そうなことはやってみたい」という想いで走り続けてきた。

「毎週、週末が近づくにつれて別の仕事に対する気合を高めていき、連休明けには疲れた姿を見せていたので、会社の同僚からしたら”変なやつ”って感じだったと思います」

そう笑うsouさんだが、その原動力は明確だった。

「誰かにやらされているわけでもなく、自分がやりたいことをやっているだけ」

そして2019年、souさんは決断する。会社員を辞め、シャボン玉パフォーマンスを本業にすることを。

空間をワクワクで埋め尽くす——ディズニーからの影響

souさんの活動を理解するには、もう一つの原体験を知る必要がある。

「こんな見た目ですが、実はディズニーが大好きなんです」

子どもの頃にディズニーランドに連れて行ってもらったことがなく、23歳で初めて訪れたとき、その感動は計り知れないものだった。音響、ライティング、炎を使った特殊効果——圧巻のパフォーマンスで空間にいる人々を魅了する技術に、衝撃を受けた。

「その空間にいる人にワクワクを届ける」

実は学生時代、野球一筋の少年だったsouさん。応援してくれる人を喜ばせることがモチベーションだった。小さい頃はやんちゃで、いろんなものに飛びついて走り回っている子だったという。

全ての経験が、今のsouさんを形作っている。

「シャボン玉で日本を元気に!」——AWABITOの活動

現在AWABITOは、souさんを中心に15名ほどのメンバーが活動している。2018年から新潟を拠点として、「シャボン玉と笑顔を全国に届けたい」という想いで活動を続けてきた。メンバーの多くは20~30代で、それぞれが本業を持ちながら、週末や休日を使ってパフォーマンスに参加している。

活動の場は多岐にわたる。公園、キャンプ場、野外イベント、そして阿賀野市の瓦テラスでのナイトショーなど、様々な場所でシャボン玉のパフォーマンスや体験ワークショップを開催している。特にナイトショーでは、照明に照らされたシャボン玉が夜空に浮かぶ幻想的な光景を作り出し、昼間とはまた違った魅力を見せてくれる。

souさんの働き方は、場所を選ばないスタイルだ。シャボン玉パフォーマンスを軸としながら、イベントの企画運営なども手がけている。

「例えば、九州に行きたいと思ったら、九州でシャボン玉を飛ばして、『こんな活動しています』っていろんな人とつながって帰ってきます。運良くそれが仕事に繋がって、今度は仕事としてその地に出向くこともできるようになりました」

会社員を辞めてから蒔いてきたタネが、今、芽を出し始めている。

シャボン玉

100年後も変わらない感動を

シャボン玉パフォーマンスを観た人たちの反応はどうか。

「パフォーマンスといっても、主役はシャボン玉だと思っています。大きいモノから、細かいたくさんのシャボン玉まで、さまざまなカタチを観て、子どもだけでなく、大人までキラキラした世界を楽しんでもらえています」

シャボン玉の魅力は、年齢に関係なく誰でも楽しめること。生活の中で様々なものを見て、どこか薄汚れていく心を、ふと童心に戻してくれる。

そしてsouさんには、さらに大きな夢がある。

「シャボン玉が与える感動って、国の文化や言語によらないところがまたすごいと思うんです。さらには、この感動はきっと100年後も変わっていない気がしています」

シャボン玉そのものは儚く、すぐに消えてしまう。でも、シャボン玉が与えるワクワクは記憶に残り続ける。何年も消えない。

「たまに、出会った子から『前も◯◯でやってたよね?見たことある!』と声をかけてもらうことがあるのですが、ほんのわずか5歳くらいの子どもでも数年前の記憶が残っていて、かつ僕のことを認識してくれているんです。これってすごいことだなと思うんですよね」

シャボン玉がもつ、本能に訴えかけるような感動やワクワクの可能性は無限大だ。

「これで世界各地と繋がっていきたいですし、シャボン玉師の方々とも繋がっていけたら、楽しそうですよね。そんなことを考えているとき、私自身がだれよりもワクワクしていると思います」

シャボン玉

おわりに

会社員を辞めてシャボン玉を生業にする——周囲からは心配や引き止めの言葉がたくさんあったという。でもsouさんは、それが逆に力になったと話す。

好きなことを仕事にする。やりたいことを素直にやる。シンプルなはずなのに、簡単なことではない。

でも、自分が作り出したもので、すぐ目の前にいる人々がワクワクして、瞳を輝かせてくれる。そんな瞬間に立ち会えることは、何にも代えがたい喜びなのだろう。

新潟の空に舞うシャボン玉。その一つ一つに、souさんと仲間たちの夢が込められている。


AWABITO(泡人)

次に新潟でシャボン玉を見かけたら、それはきっとAWABITOの誰かが飛ばしたものかもしれない。ぜひ立ち止まって、その魔法のような瞬間を楽しんでみてほしい。

ABOUT ME
シャボン玉おじさん
シャボン玉おじさん
プロバブルアーティスト
元国家公務員。 2022年11月にシャボンのギネス世界記録「Longest garland wand部門」のギネス世界を達成。 株式会社「学研」のシャボン玉製品の監修者&アドバイザー。書籍「学研アウトドア大シャボン玉チャレンジ」 平成6年に徳島大学工学研究部の協力のもとスペースバルーンを使用して、世界で初めて宇宙空間(成層圏)でのシャボン玉の生成に成功。その様子は令和6年6月にTBSテレビ「どうなるでSHOW」という番組にて放映されました。 多くのテレビ番組や、メディアにも出演している日本屈指のシャボン玉パフォーマーです。
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